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『月とコーヒー』

『月とコーヒー』  吉田篤弘 著  徳間書店  2019.2

 24の短編集。珈琲自体は本編中にはその言葉だけがちらりと出てくるのみだが、それぞれしっかりと存在している。

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 万年筆の話が連作のように、出てくる。英語でfountain pen。海外で仕事をしているときにその単語がわからず、また先方が中華系だったために漢字で伝えると「ああ、わかる」という話になったのだが、彼も英語でなんというかわからずに二人して笑っていたことが懐かしい思い出だ。
 
 万年筆のインクといえば、ブルーブラックという色が記憶に深くある。グーグルで検索すると、今ではヘアカラーに多く使われている言葉であることが分かった。もちろん「万年筆」とつけて検索すると望み通りのものが現れる。何とも懐かしい。
 私が万年筆を愛用していたのが学生時代。中学のころ、お小遣いで買っていたものが非常に使いやすく、長年使っていた。社会人になったころと、「書くこと」がいつしか「打つこと」に変わったころが重なったのだが、ちょうど引っ越しが相次ぎ、その中で残念ながら紛失してしまった。値段以上に気に入って使っていたのだが。
 当時家の近くの文房具店でインクを買っていた。その店のインクは、瓶のものとカートリッジ式のものがあり、それぞれ黒・青・ブルーブラックの3種類があった。その名前にその頃は怪訝に思いつつも何かにつかれるようにそのインクを使っていた。青っぽくも黒っぽくもあり、どちらでもないいわば中性的な色。
 
 中学生のころだから、大人への憧憬といったようなものもあっただろう。小説の中などで見た、欧米へのあこがれもあったと思う。縦書きをすると右手がインクで汚れてしまい、横書きで書くことが増えたようだ。(手が汚れるのを嫌い、英語を学んだなどと書けるならばきっと今頃は別の世界が広がっていたことだろう)

 インクが乾く速度の関係で、仕事中はサインペンを使うことが多いが、また万年筆を使う機会を作ってみたいものだ。

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